「男はつらいよ 柴又慕情」あらすじと感想

男はつらいよ 柴又慕情

1972年に公開の「男はつらいよ 柴又慕情」。

シリーズ9作目の本作ではマドンナ役に吉永小百合を迎えて、渥美清演じる車寅次郎の片思いを描いています。

「男はつらいよ 柴又慕情」あらすじと感想

映画冒頭|寅さん恒例の夢のシーン

病弱な夫(前田吟)と貧しい漁村で暮らす、さくら(倍賞千恵子)を借金取りから救うカッコよすぎるヒーローの話から始まります。

ノスタルジックな駅舎で木の長椅子から落ちて夢から目覚めますが、こんな夢を見るという事は寅次郎もテーマ曲にあるような「偉い兄貴」になりたいとどこかで強く思っているのでしょう。

ヒーローに憧れる寅さんの子供のような一面をほほえましく感じます。

見るからに田舎の駅舎は木の板壁。

1両編成の古いディーゼル車にミルク缶を積んだ始発列車に乗り込む寅次郎、今は探しても見当たらないのどかな風景です。

夢のシーンから一気に現実に引き戻しながらも、この駅舎のシーンは全国を旅する寅さんの日常の一部分を切り取ったフーテンの寅さんらしい一瞬に見えます。

シーンは葛飾柴又へ

寅さんと歌子

燕の帰ってこない巣を片付けようかと思案する御前さまにさくらが「もしツバメが来年帰って来た時もしも巣がなかったら悲しむんじゃないでしょうか」というところ。

さくららしい優しい一面をあらわしたシーンですが、これから「とらや」で巻き起こる大騒動を予感させる場面。

実は寅さんも自分の帰る家がなくなってしまうかもしれないという大ピンチに見舞われます。

さくらが満男を連れて「とらや」を訪れた時、玄関先にある魔よけの札の下に「貸間あり」の札を見つけます。

おいちゃんに訳を聞いたところ、さくらが新築する家の足しにしたいとのこと。

ところがさくらは、もしこれを帰って来た寅さんが見たらなんて思うだろうと思案します。

確かに寅さんがこの札を見たら「貸間あり」を「もうお前の帰ってくることをはないよ」と読むかもしれません。

さくらのために良かれと思ってやったことですが、このおいちゃんの作戦は果たしてどうだったのでしょうか。

そんなところに寅さんがふらっと旅から帰ってきます。

寺にあった燕の巣と「とらや」がダブって見え、これから巻き起こるであろう騒動が目に浮かびます。

さくらの心配通り、案の定寅さんは「とらや」の下がった「貸間あり」の札を見つけてしまいます。

この時の寅さんのショックはいかばかりだったでしょうか。

まさに「もうお前の帰ってくるところはないよ」と読めたのではないでしょうか?

ショックと怒りに落胆した寅さんはそのまま回れ右。
「とらや」を出て行ってしまいます。

さくらの引き留めにも耳を貸さず、自分で安息の場を見つけると言い残し去っていきます。

これで「とらや」での一つ目のエピソードは終わりですが、特に面白いのは燕と寅さんを重ね合わせているところだと思います。

いつどこへ飛んでいくか分からない所、そしていつ戻ってくるのかさえも定かではない。

燕と寅さんはそっくりです。
このあたりの表現方法、さすが山田洋二監督といったところだと思います。

それにしても渥美清の演技力には脱帽します。

セリフのほとんどがアドリブではないかと思うほどサラサラと江戸弁が飛び出すところもすごいのですが、とにかく「顔がおしゃべり」なんです。

感情を顔で表現する力がずば抜けています。

いよいよマドンナとの出会い

金沢〜福井を行商する寅さんと、3人で女子旅をする歌子(吉永小百合)との出会い。

当時の年頃の娘さんが抱える思いを交えながら微かな接点から寅さんと歌子が出会うシーンが描かれます。

普通だと何の縁もない二人が奇跡的な出会いをするというところは、とても面白い!

特に福井の茶屋での出会いのシーンは、冒頭の駅舎のシーンと並んで古き良き日本の風景が描かれていてとても楽しく観ることができます。

時代的な見方をすると、この頃の若い女性のスカートがかなり短いところに時代を感じます。

葛飾柴又に帰って来た寅さんと歌子の再会

「男はつらいよ 柴又慕情」あらすじとキャスト

ここから物語は第2章に入ります。
いよいよ寅さんの恋の始まり。

ここでもまた寅さんの顔はとってもおしゃべり。

瞬間的に恋に落ちたように思われますが、実は福井で出会ったときすでに寅さんは歌子に恋したのでしょう。

寅さんの一目ぼれは、もはや特技のようにも感じます。

そんな時、柴又の題経寺に再会を願ってお参りに行く寅さんの元へ歌子がやってきます。

歌子も何となく晴れない気持ちを抱いていたので、底抜けに明るい寅さんとの出会いに救いを求めたのではないでしょうか。

そんな歌子を見て寅さんの気持ちはますます燃え上がります。

マドンナ吉永小百合の何とも可愛らしいこと!

エマ

マドンナの吉永小百合さんが強調されて映し出されますが、その可愛らしさは強烈です。

特に目の表情は渥美清さんの顔演技に勝るとも劣らない美しさだと思います。

普通に考えたら渥美清さんにマドンナ吉永小百合さんとでは釣り合わないように思いますが、そのギャップがまたいいと思います。

寅さんの恋と、寅さんの明るさに救いを求める歌子

歌子は自分の辛い境遇を寅さんに聞いてもらいたい、寅さんといることで気を紛らわせたいと思って寅さんを頼ってきます。

そんな歌子にますます気持ちを向けてしまう寅さん。
寅さんはとことん純粋なんだと思います。

そんな寅さんの思いと歌子の思いはすれ違っていますが、山田洋二監督は微妙にマッチングさせながら二人の恋?を描いていきます。

そのあたりの心の機微を描かせたら現代にも通じる素晴らしい監督だと思います。

歌子は寅さんを通じてさくらに相談を持ち掛けます。

ひろしとさくらは的確に歌子の悩みに向き合って、素晴らしいアドバイスを行います。

そのことはすなわち寅さんの失恋を意味することになりますので、映画のストーリーとしてもかなり複雑さを増していきます。

二人が夜道を「とらや」に帰る途中、歌子が寅さんに悩みを寅さんに打ち明けます。

ここで寅さんの失恋が決定的になるわけですが、その打ち明けのタイミングも絶妙です。

エマ

見ていて切なくて切なくて思わずもらい泣きをしてしまいました。
きっと多くの観客がここで涙していることでしょう。

寅さん、ふたたび旅に出る

そしてまた寅さんは「空に浮かぶあの雲のようになりてぇのよ」といって旅にでます。

寅さんの一方的な勘違いから始まる恋。

大方の思いに一致して終わってしまうのですが、とにかく面白く、楽しく、切ないストーリーと展開には本当に心洗われる感じがします。

このシリーズは48作プラス2作ありますが、単なるコメディと言ってしまうのはもったいないくらい楽しめる作品です。

渥美清さん、吉永小百合さん、倍賞千恵子さん、ほんとうにありがとうございます^^

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